私たち家族が最後に家族写真を撮ったのは、3歳違いの私たち三姉妹がそれぞれ大学、高校、中学校へ入学するときのことでした。それまで写真館で写真を撮ってもらうのは七五三のときくらい。いつも隣町の商店街のはずれにある昔ながらの小さな写真館でお願いしていました。
写真館のご主人は芸大を出た写真家ということで、こじんまりした写真館でしたが人気があり、ウインドウにはいつも素敵な表情の写真が並んでいたのを思い出します。キビキビした奥さんは、着付けやポージングを担当。シワひとつまで気を遣って、ポーズを変えるたびに衣装がきれいに見えるよう調整してくれていました。そうそう、1番下の妹の7歳の七五三のとき、カメラの前でニコッと自然に笑顔を見せた妹に「あ!この子笑える子やわ!」と奥さんがつぶやき、ご主人とふたりで良い表情を撮ろうと撮影をしてくださったこと、カメラの前で硬い笑顔しかできなかった私には鮮明な思い出として残っています。
そんな写真館での記念写真、個々の入学の記念に写真を撮ったことはこれまでありませんでしたが、3人揃って入学というのは家族の歴史で一度しかない記念すべきタイミングということで、写真に残すことになりました。大学生になる私は入学式用のスーツで、ふたりの妹は真新しい制服で、3人並んで立ち奥さんの指示に従ってとったポーズで撮影。これが私たち家族の最後の記念写真となりました。
妹はその後、中学校を卒業することなく事故で逝ってしまい、今はもう写真館も閉館しています。あの時撮った写真、しばらくは見ることができませんでしたが、撮っておいて良かったと思う一枚となりました。